茉莉愛ちゃん達から逃げるように離れた私は、悶々としながら大階段を昇っていた。
最悪な状況を作っちゃったな。盗み聞きしていたのは完全に失敗したし。でもあの会話は仕事の話じゃなくて個人的な、たぶん”密会”の約束だと思う。
もしそれが事実なら、茉莉愛ちゃんはどういうつもりなんだろ。もちろん仕事に支障が出る以外、個人的な事なら私がそこまで関与する必要はないし……
「別れているんだから私には関係ないのに……」
それなのに正直、放っておけない自分もいる。
凪と付き合ってるのにどうして? って気になって仕方ないなんて、自分でもわからない感情に嫌気がさす――――
***
「瑠歌!」
階段の真ん中に差し掛かった時、突然背後から私を呼ぶ声にドキッとしながらもゆっくりと後ろを振り返ると、なぜか階段下に凪の姿が―――
「な……んで?」
追いかけて来るの。そこまでして文句言いたいの? そんな考えしか頭に浮かばない。
反射的についその場で足を止めると、凪は駆け足気味に階段を昇りあっという間に私より2段下まで追いつかれてしまう。
「話がまだ途中だったから」
「私は別にもう話す事なんてないよ」
目も合わせず冷たく突き放そうとするのに、それでも凪は引こうとしない。
「だけどさっき何か言い掛けてただろ?」
しっかり聞き取っていたんだ。私が言い掛けた《《言い訳》》を。



