要件を耳打ちし先に鈴木様の待つ席へと戻ると、なぜかそこに彼と親し気に談笑している茉莉愛ちゃんの姿が。
もしかして知り合い?
それくらいたいして深く考えてはいなかった。まだその時は――
***
違和感を感じたのは、それから数日後の事。
式場の見学に来店された1組のお客様の会場案内を済ませ、正門近くまで見送ってお辞儀をしながら挨拶を終えたところで、ある気配を感じ取った。
それは正門横の植木の陰。動物なのかそれとも誰かスタッフなのか、とりあえず《《そこ》》に誰かいるのは間違いない。
何かわからない気配に恐る恐る陰から覗いてみると、そこにいたのは茉莉愛ちゃん。……と
「あれって確か、鈴木様……?」
仁菜が担当している結婚式のゲストの1人で、先日、余興のDVDを届けに来たのを覚えている。
どうして彼が茉莉愛ちゃんと? それにこんな場所でコソコソ隠れるように……
こういう場合、個人的なやり取りを干渉しちゃいけないから見て見ぬフリをすべきなんだと思うけど、あまりに怪しくて目を逸らす事が出来ず息をひそめて話し声に耳を澄ませてしまった。
けれど聞こえてきた会話は、触れちゃいけないもの。
「LINE交換ありがとうございます。今度俺と2人でご飯に行きませんか?」
「はい! ぜひ喜んで」
それは明らかに《《仕事以外》》の内容だったから――――



