最後の恋って、なに?~Happy wedding?~


 しかしこれで終わった訳ではなく、それどころか状況は複雑に―――

 ***

 それは数日が経った、ある午後の事。
 時間は14:00 事務所で1人、自身の仕事をキリの良いところまで終わらせた私は、昼食も済ませて次の打ち合わせの準備を行っていた。
 すると『こんにちは』と事務所の外から声がし、飛び込みの見学者かな? といつものように対応する事に。

 入り口にいたのは、20代くらいの色白で爽やかな1人の青年。手には何かを持っていて、会場の見学……という訳ではないように思えた。
 
「いらっしゃいませ。ご用件をお伺いしますね」
「あ、どうも……鈴木と言います。えっと……来週末の結婚式の余興で使うDVDを持ってきました」

 緊張気味にたじろいながら手渡してくれたのは、透明のケースに入った1枚のDVD。
 確か……来週末の結婚式と言えば、担当しているのは仁菜だったはず。こういう場合、この式場のきまりとして担当者がお客様の対応をするのを基本としているため、私は彼に担当者を呼びに行く旨を伝えて打ち合わせルームの席へと通した。

 この時間、仁菜は他のお客様の案内見学をしていてそろそろ終わる頃だと思う。私が様子を見に会場に顔を出すと、案の定、挨拶を終えてお客様と一緒にこちらに歩いてきた。