すると桐葉さんはチラッと横目で茉莉愛ちゃんの姿を目視し、状況をすぐに把握したらしく『あー……なるほどな』と意味深に納得した様子で今度は私に視線を合わせた。
「何って言われてもなぁ。とりあえず彼女の体調を気遣いながら今回の件を丁寧かつ責めない程度に説明して、今後は気を付けるよう注意しただけだ」
「丁寧かつ責めない説明……。あれだけ女性スタッフに厳しく当たっていた支配人にそんな高度なスキルが身についていたとは……」
「おい。思っている事が口に出てるぞ」
『なかなかに失礼な奴だな』と不満げな桐葉さんを笑顔でスルー。
具体的な内容の詳細までは聞かなかったけれど、上手く注意しただけで反省しているところを見ると本当にわかってくれたのかも。
だけどもしかたしたら《《桐葉さん》》の言う事だったから素直に応じたのか……なんて考えてしまった事は否めない。
何事もなかったかのように振舞う茉莉愛ちゃんに若干まだモヤっとする部分はあったけれど、この件は桐葉さんに任せているしこれ以上私が関与して口を挟むとまた拗れそうな気がしたから、ほとぼりが冷めるまで少し様子を見る事に。
その間、凪は私に苛立っていたのか避けられているのはわかった。……とは言え、今なにを言っても逆立てするだけのような気がしたから、自分からは触れる事はなかった―――
