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「私が遊んでいるって言うんですか!?」
夕方の退勤前に茉莉愛ちゃんから時間を貰い、ホールの隅に向かい合わせに座って早速『最近
打ち合わせの数が多いような気がするんだけど―――』と本題を切り出した途端、彼女は突如豹変。
普段大人しくておっとりしているのとは違って、大きく声を張りカッと目を開いて瞬き1つせずにこちらをジッと見据えながらその瞳から離すまいとしている。
聴き方がまずかったかもしれない。
「ちょっと待って? そういう事じゃないの、誤解させたならごめん。これはあくまで事実確認だけであって、疑っているとかそういうんじゃ―――」
「私は遊んでなんていません!」
真剣な目つきでこちらが言い終わる前に言葉を遮ってまで食い気味に否定するなんて、彼女にしては珍しい。
それくらい本気なんだろう。必死に訴えようとするその姿を目の当たりにすると、少しでも疑ってしまった自分が情けないと思ってしまう。
しかし後悔は遅かった。茉莉愛ちゃんの興奮は更にヒートアップ。
「憧れの棗さんに疑われていたなんてとてもショックです! 見損ないましたっ」
「えっ、ちょっとっ」
勢いよく椅子から立ち上がると、怒鳴るように声を強調させて捨て台詞を吐き、止める間もなく私に背を向けスタスタと部屋をあとにしてしまった。
これは完全に怒らせてしまったらしい。



