眩暈が少し落ち着いたところで身体を支えてくれていた桐葉さんに一言お礼を伝え、彼の後をついていくように席に戻ったけれど……それがいけなかったのか、茉莉愛ちゃんの不審そうな視線を痛いくらいにビシビシと感じる。
桐葉さんが席を立った時の状況は見ていないからハッキリした事はわからないけれど……彼の離席の理由が茉莉愛ちゃんから逃げて来たんだろうなとは、なんとなくでも想像がつく。
「ちょっと瑠歌大丈夫!? 顔が真っ青じゃん」
「う、うん……たぶん平気」
そんなに酷い顔色をしているのか、仁菜は私を見るなり目を丸くしながら水の入ったグラスを手渡してくれた。
凄いな。さっきまで私以上に酔っていたはずなのに時間が経って酔いが冷めたみたい。彼女の目の前にある生ビールは注文したばかりなのかグラスからは雫が滴り落ちていて、今からまた飲み直そうとしているのが見てとれる。
さすがと言うかなんというか―――
水を受け取りながら仁菜に関心しつつ席に座ると、私の前に座る茉莉愛ちゃんから話し掛けられた。
「2人でお手洗いから戻ってきたんですね」
ニコリと不敵な笑みを浮かべながら、含みを持たせた言い方でそれはそれは怖いくらいに意味深で……。
「トイレから出たら偶然一緒だったから……ね」
こんな時まで言い訳を考える嘘を付くなんて、何やってんだろ。



