そう。それはまさに今飲み干した”酒”だった。
突如としてやってきた吐き気に『ちょっとまたお手洗いに……』と足早に席を立ち、直行したトイレで難を乗り越えたけど絶望的に具合が悪い。
今日はやっぱりお酒はダメだったな……―――
こめかみを抑えながらトイレから出て先ほど同様に階段を昇ろうとすると、今度は別の人物と鉢合わせた。
「やっぱり酒が弱いんだな」
腕を組んで行く手を阻むように私に近付いてきたのは、桐葉さん。
茉莉愛ちゃんから逃げてきたのか単純にトイレを借りに来たのか、まぁどちらでもいいんだけど今は相手をしている気分じゃない。
「別に弱い訳じゃないですけど……今日は特別です」
「最初に会った時も寝たり吐いたり忙しかったけどな」
「あれも仕方なかったんです」
さらっと流して席に戻ろうとするのに、鼻でフッと笑われついムッとして反応してしまう。
こんな時に嫌な事を思い出させてくれるとは。確かに最初の時は記憶が曖昧ではあったけれど、あの時は失恋したからで……ってこの人には関係ない事だから言わないけど。
「今日はよく参加したな。あんまり寝ていないんだろ?」
「それは……だってせっかく私の誕生日祝いだって誘ってくれたのに、断ったら申し訳なかったから……」
言い訳染みた返しになってしまい声が小さくなっていく。



