私に対しての当てつけな気もするけど、キャラが違いすぎてどれが本当の茉莉愛ちゃんなのか気味悪くさえ感じる。
だけどそんな事を思っているのは私だけ。彼氏である凪には”心配”の二文字しかなかった。
「茉莉愛、その辺でもうやけておけよ。体に障るから良くない」
優しく彼女の左肩に手を添えて、厳しい目つきでこれ以上はダメだと制止させたから。
彼氏に止められて茉莉愛ちゃんも暴走が落ち着いたらしく、シュンとした表情で俯きながら『ごめんなさい凪くん……』と小さく謝っている。
結果、ラブラブを見せつけられている事には変わりない―――
私が凪と付き合っていた初めの頃は、よく2人でお酒を飲みに行ってたな。居酒屋だったり自宅で乾杯して、ほろ酔いになりながら他愛もない話で笑っていたっけ。たったそれだけの事でも、あの頃は純粋に幸せで……1番楽しかった……
あー……こんな時に過去を思い出すなんて最悪。今は”思い出”なんて綺麗なものじゃなくて、フラッシュバックに苦しめられる記憶でしかないなんて。
嫌な事を思い出したなと、頭の中から振り払うようにグラス半分まで残ったお酒をグビっと飲み干す。
もう帰ろ。これ以上ここにいても気分が悪くなるだけだから。
―――しかし、精神面だけじゃなく、別の意味でも気分が悪くなってしまった。



