性懲りも無く前向きで、そしてまた私に同意を求めてきた。
返事に困惑しながらチラッと凪の方に視線を向けると、彼は複雑な表情で茉莉愛ちゃんを見つめている。
そりゃ誰だって良い気はしないよね。目の前で自分の彼女が《《自ら》》他の男に近付いていっているんだから。
「私、お酒って凄く弱くて……飲めない訳じゃないんですけど、カクテルとかサワーもグラス半分ですぐに酔っちゃうんですよね」
挙句『だからお酒が強い人が羨ましいな』なんて、誰も聞いてもいないのに自分から弱さアピールし始めた。それも”飲み会あるある”の典型的な落としテクで。
こんなの今どき誰が落ちるんだろ? って呆れながら聞いていたけど、茉莉愛ちゃんの場合は他と少し違う。この子は普段から”守ってあげたくなる”タイプの女性だから、それに拍車が掛かって更に好感度が上がる仕組みだ。これが逆に私が同じ事を言っても間違いなく『そんな訳ないでしょ』と言われるのがオチ。
茉莉愛ちゃんのように自然と言えるって、そっちの方がある意味で羨ましい。
「でも今日は調子がいいし、まだ飲めそうな気がするから私も何か注文しようと思います!」
桐葉さんの方に体を寄せたまま敢えて報告も入れ、茉莉愛ちゃんはメニュー表を彼に見せるようにしてカクテルのページから探し始めた。



