茉莉愛ちゃんが席に戻ってから少しして私も戻ると、まだみんなワイワイ盛り上がりを見せていた。
「瑠歌~遅いじゃぁん!」
「ごめん。トイレ、混んでたから……」
顔を赤らめながらビール片手に酔って私にもたれ掛かる仁菜は、もう完全に出来上がっている。
この数分の間にどれだけ飲んだんだろ。呆れ気味に『飲みすぎだからいいかげんやめときな』と言ってみたものの、この様子だと今更遅い気がする。
さっきの私と茉莉愛ちゃんの話は、もちろん他の誰も聞いていない。何も知らない凪も桐葉さんも、ごく普通に場を楽しんでいる。
だからこそ、些細な出来事が気になってしまうのかもしれない―――
「あ、次なに飲みます? 《《桐葉》》さん」
茉莉愛ちゃんはメニュー表を広げながらグイっと桐葉さんの方に体を寄せ、一緒に見ようと距離を詰めていく。それもいつの間にか支配人呼びもしていない。
「俺はもう結構だ。明日も仕事だからやめておく」
さりげなく彼は断り体を離そうとするけれど、茉莉愛ちゃんの猛進は止まらない。
「桐葉さんって、普段もお酒はよく飲むんですか? 何が好きなんですか? あ、煙草とかも吸うんですか?」
上目遣い気味に誰が見ても驚く程の饒舌で桐葉さんに質問攻めを始めた。私も、そして凪の表情からしても初めての出来事で唖然とするばかり。



