茉莉愛ちゃんは手を後ろで組み、クスりと余裕の笑みを浮かべながら言い放つ。
「私は何もしていませんよ? むしろ私は彼を助けて支えてあげたほうですし、結果的にはお互い好きになってしまいましたが凪くんが選んで決めた事ですから」
「はっ!?」
「それに。彼を追い込ませて苦しめたのって、棗さんに落ち度があったからではないんですかね? 責任転嫁を為さる前に、ご自身の非を認めるべきかと」
「それはっ」
ムカつくけど図星だった。勢いよく反論していたはずなのに痛いところをついてきて言い返せず、唇を噛みしめてグッと堪えるしか出来なくなる。
茉莉愛ちゃんはお手洗いには寄らず、今度は彼女の方から私の横に立ち耳元で小さく囁く。
「今度は支配人ですか? 彼も格好いいですし、私も良いなと思っていますよ」
「えっ……?」
「お2人はとてもお似合いです。”本当に”」
最後まで嫌味が止まる事なく、意味深な言葉と『頑張ってくださいね』と薄ら笑いを残して飲み会の席へと戻っていってしまった。
怒りが込み上げて湧くように熱くなっていた頭が、彼女の《《何か》》含みのあるメッセージのせいで一気に血の気が引いていく。
嫌な予感がしていた。それが何かは漠然としていて上手く言えないけれど……だけど、このままで終わる事はないって。
それだけはわかる――――



