『そうなんですね』と答えながらもニコニコした表情が妙に怖い。それにどういうつもりか、彼女は桐葉さんとの話題を掘り下げていく。
「支配人って、口下手ですけど素敵な方ですよねぇ」
「そう、なんだね……。私にはわからないけど……」
しかしいくら否定したところで、こっちの反応を楽しんでいるように見えた。
「棗さん、凪くんとの事があって気持ちの整理がついてないみたいでしたもんね。寄り添ってくださる方に出会えたみたいで良かったです」
「っ!?」
同情したような目つきでまた『可哀相な人』と遠回しに言われた気がして、無性に腹が立ってくる。
どうして茉莉愛ちゃんにそんな事を言われないといけないの? この子に私の何がわかるって言うの。
「貴女のせいなのに……」
抑えきれなくなった感情が我慢の限界に達し、言葉として声に出てしまう。
「凪を奪った貴女から、そんな事を言われたくないっ」
鋭く睨みつけて眉間に皺を寄せているのは自分でもわかる。そうして責め立ててしまうくらい爆発し、感情のコントロールを失っていた。
彼女は何も発せず笑っていた表情が一変、真剣な顔つきで細めた目が据わっている。
私は以前にもこの表情を見ている。そしてたぶんこれは他の誰も知らない。もちろん凪ですら……
これは私にしか見せない彼女の”裏の顔”だから―――



