緊張のせいか、身体中が拘束されて縛られているような感覚に陥る。まるで金縛りみたいに。
そんな私とは反対に、こっちに向ける茉莉愛ちゃんの笑顔はあまりに爛漫としていて、何にも縛られていない自由さを感じる。
彼女は「ふふ」と小さく笑ったか思うと、待っていましたかのように答えた。
「今朝私、見ちゃったんですよね。支配人からネックレスを受け取るところを。あれって、彼の家に泊まった忘れ物ですよね?」
疑いじゃなく確信を持った言い方が、“楽しむ気持ち”を物語っている。
そしてこの瞬間、私も確信した。
凪に話したのは茉莉愛ちゃんだって事を。
今朝、彼は曖昧に私に聞いてきた。事実かどうかわからなかったから。
私も”もしかしたら”とは予想していたけれど、でもこれで出所がハッキリした。同時に、面倒な相手に見られてしまったのはマズイって直感する。
だからどう返事をしたら自然なのか少し考えた後―――
「そんなんじゃないよ。会社で落としちゃったのを偶然拾ってもらっただけ」
心を落ち着かせながら悟られないよう嘘を吐く。
素直に話したところでこの子が信じるかはわからないし信じてもらおうとも思わないから、今はとにかく1秒でも早くここから抜け出したい気持ちしかなかった。
だけど相手は手強い。そしてそこには、私の知る”病弱”な彼女はいなかった。



