この状況に座るのを躊躇っていると、見兼ねた仁菜に『早く飲み物を注文しよ』と急かされて腰を下ろすしかなくなり、こうなると否が応でも茉莉愛ちゃんの隣に座る凪と目が合うから、スッと逸らしてなるべく顔を見ないようにしてしまう。
これじゃ私が避けてるのがバレるかもしれない……。
誰がどういう意図で席順を決めたのかはわからない。だけど茉莉愛ちゃんが桐葉さんの隣に座るなんて結構珍しいんじゃないかな。仕事でもほとんど話している所を見た事がないし、この席で”仲良く会話”なんて想像も出来ない。
凪とも気まずいまま。今朝あんな事を言われてから仕事中も話は疎か顔も合わせないし、変に噂が立つのも嫌で極力桐葉さんとも2人きりにはならないようにしていたのに……まさか飲み会に参加するとは。
自分でも嫌になるくらい余計な事ばかりが頭の中を巡り、仁菜から手渡されたメニュー表を持ったまま、目を通しているフリして実際は全然集中出来ずにいた。
「瑠歌も同じのでいい!?」
「えっ……」
そんな時、横から仁菜に肩をトントンと叩かれて少し目が覚めた。
現実逃避気味で彼女が何を注文したのかほとんど聞いてなかったから『それでいいよ』と適当に合わせてやり過ごす。
一言も発しない桐葉さんと凪に挟まれながら、注文し出てきたビールを片手に仁菜の掛け声に合わせて乾杯をする羽目に―――



