仕事だから仕方ない。って割り切っているけど、今まで通りなんてとても無理。社内恋愛のネックなところだと思う。

「そういえばさ」

 お互い黙々と後片付けを進めている中、こっちに視線を向ける事なくゴミをまとめながら話を切り出した凪。

「支配人の家に泊まったんだって?」
「えっ……!?」

 前置きもなくいきなり核心を突いてくるものだから、ハッとして作業の手が止まり勢いよく彼の方に顔を向けた。

 どうして凪がその事を知っているの? 桐葉さんが言うはずないのに、なぜ? まさか今朝のやり取りを見られた?

「どう……して……」

 ”なぜ、どうして”が頭の中を支配して、カタコトになってしまう。

「驚いたって顔してる」

 表情まで読み取られ、動揺し心拍数が一気に上がり瞬きをするのさえ忘れる。
 どうしてバレたの? よりによって《《元彼》》に。

「その様子だと、やっぱり泊まったのは事実なんだ」

 複雑に鼻で笑う凪の質問の仕方に違和感を覚えた。
 ”泊まったんだって?”って、”やっぱり”って全部《《誰かから》》聞いたような口ぶり。半信半疑で質問して鎌をかけたって感じに思える。

「誰に聞いたの?」

 そう聞き返すのが1番正しい気がしてゴクリと生唾を呑み込んで訊ねてみたけれど、彼が素直に答えるはずもなく。

「誰でもいい。本当なのか俺が聞いてる」

 質疑応答は平行線のまま。