本当はほとんど眠れなかったなんて、言ったら申し訳ない気持ちがしたから。眠れなかった理由なんて聞かれても、『緊張していました』なんて恥ずかしくて馬鹿正直には答えたくないし。

「今日は終わったら早く帰って休め。疲れは取れていないだろうからな」

 珍しく優しい言葉と、最後に『用事はそれだけだ』と言って事務所へと戻っていく桐葉さんの後ろ姿を目で追うように見送りながら、仕事に戻らないとと思い出して私もそのまま会場へと向かった。

 この一連が波紋を呼ぶ事も知らずに―――――

 ***

 1組目の式が午前10時から始まり、お天気も保ってくれて外での演出も順調に進んでいく。終わったら2組目の式の準備。こうなるとゲストハウスは忙しく、休む暇もなく時間に追われあっという間に夕方になる。
 繁忙期はこれが毎週だから結構きつかったりするんだけど。

 18時に全ての式が終わり、私達は分担して会場や外の片付けを始めたけど……
 さすがに今日は疲れて眠い。昨日もあまり寝てないしな。

 欠伸が出るのを我慢しながらテーブルの上の飾りつけを箱へとまとめていると、各テーブルのゴミを袋に捨てていく凪が私の方へと歩いてきた。

「お疲れ、瑠歌」
「お疲れ様……」

 ギクシャクしながらお互い目を合わせたのは一瞬。偶然とは言え、一緒に同じ場所を作業するのは今でも気が引ける。