寝ろと言われても……
 図々しく他人の部屋のベッドに入るほど無神経でモラルのない人間ではないため、私はリビングの広いソファを借りる事に。
 さっきも座ったこの白いソファは、汚れ1つない真新しさでレザー調ではなくフワフワと優しい肌触りが特徴。素材が良いせいか座り心地もなかなかで、これならこんな状況下でも眠れそうな気さえする。

 「この際だから神経図太く寝ようかな」

 来た最初は緊張感が物凄かったけど、珈琲を飲んでお風呂も借りたら落ち着いたし、桐葉さんの言うように少しでも寝ないと保たない。
 だから何も考えずにとソファに横になると、いつしかうつらうつらと瞼が重たくなっていくのを感じ始めていた―――


 ***

 どのくらい経ったのか、《《何か》》が視界を暗く遮った気配を察して、うっすらと目を開けた。

「し、支配人っ!?」

 視界に飛び込んだ桐葉さんに、脳内が一気に覚醒。驚いて思わず上体を起こした。

「悪い、起こしたか?」
「い、いえ……」

 爆睡とまではいかずとも、さすがに目の前に男性のが姿があればビックリするな……
 彼は腰を落として私と同じ目線に立ち膝をし、ブランケットを手にしている。どうやら掛けてくれていようとしていた……?

「さすがにそのままじゃ肌寒いだろ。風邪ひいたらまずい」

 そう言いながら私の膝あたりにブランケットをそっと置いた。