なんかこれって……
「付き合ってる彼氏の家に泊まりに来た彼女感があるよなぁ」
ミントの香り広がるバスソルトが入った浴槽に浸かり、真っ白な天井を見上げながらエコーが掛からない程度の音量でボソッと呟く。
桐葉さんがここまでしてくれるなんて……意外と女子力のある人な気がする。
付き合っている訳でもない職場の男性上司の家に、それも深夜に1人でお邪魔して一緒に珈琲を飲んでお風呂まで借りるなんて……凪と付き合っていた時ですらなかった事。
まぁ彼の場合は実家だったから出来なかったんだけど、それにしても我ながら凄い事をしているような・・・
「仕事に関係するなら彼は家に女を泊めるのも厭わない……か」
やっぱり支配人は彼女より仕事なんだぁ……なんて悠長に考えながら長風呂から上がると、タオルの横に洗濯と乾燥、それにアイロンまでされていたブラウスとスーツがハンガーに掛かっている事に気が付いた。
想像以上に家庭的。家の中も綺麗に片付けられているし、さすが仕事がキッチリしているだけあって性格が表れている。
「出たか」
「はい。先、お風呂……ありがとうございました」
「別にいい。それより少しでも寝ろ」
リビングへと戻ると桐葉さんはまだスーツのままだったけど、これからお風呂に入るらしく私と入れ違いに部屋を後にしていった。



