最後の恋って、なに?~Happy wedding?~


「……へ?」

 う、そ。さすがにそれは信じられない。だって付き合っていながら家に呼ばないなんて……

「それは絶対ありえないって!」

 興奮気味に声を張ってしまい手に持つ珈琲カップの中身が揺れ、急に大きな声を出したものだから桐葉さんも驚いた様子で目を丸くしている。
 
「なんだよいきなり。そんな大声を出す事か?」
「た、確かに……」

 我ながらそんなに騒ぐ話じゃないとは冷静に思う。……が、やっぱり『そんな馬鹿な』とも思ってしまう。

「大きな声を出してすみません。だけどビックリしすぎて……」
「何がだ」
「え、だって誰も部屋に入れた事がないなんて、当時付き合ってた人くらいはあるんじゃ……」
「ない」

 珈琲を飲みながら、冷静にピシャリと否定する桐葉さんからは嘘も隠しも感じられない。至って本気なのがわかる。だからこそ驚きだ。
 
「いやいやいや、それはありえないって。ないない」
「なんだよ。どうしてお前がそう言い切るんだよ」

 私が1人で納得せずにいるのを彼は溜め息交じりに『意味わかんねぇな』と眉間に皺を寄せて見ている。

「他人ならまだしも……交際相手とはデートや泊まりで1回くらいは家に連れてくるものだから、普通は」
「《《普通》》ってなんだ。何が基準だ。俺は家に誰も連れ込まない。特に女はな。プライベートくらい1人で良い」

 胸を張って言い切ったけど、ツッコミどころは満載だ。