お互いが心を許している、そんな表情。
こんな桐葉さんは初めてみる。
「でもこれって、元カノ……?」
思い浮かぶのは、以前桐葉さんが話してくれた”恋愛にのめり込んだストーカー”の彼女。
けれどその人は桐葉さんのトラウマの元凶のはず。こうして大事に残しておくとは思えないし……
じゃぁ、その前の彼女? って、それも考えにくいか。
まさか……今の彼女なんじゃ―――
「いやいやいや、それはさすがにあり得ないよね。女が苦手だって言ってたばかりだし」
写真を眺めながら、まるで探偵にでもなったように顎に手を当ててブツブツと独り言を呟いていると背後に気配を感じた。
「おい、何見てんだ」
「あっ」
声を掛けられ、振り返る間もなく後ろから伸びてきた手によって見ていた写真を取り上げられてしまい、次に振り返った時には桐葉さんは若干迷惑そうな表情で写真を棚の中へとしまっている。
あー……この感じからすると余程知られたくない相手なのかもしれない。と、また推理してしまう。
たぶん答えてはくれないだろうとはわかっていながも、私は写真の人物に触れてみた。
「その写真の人、凄く綺麗な人ですね」
案の定、彼は何も答えずソファに腰掛け珈琲を口にしている。その正面には私の分の用意まで。
やっぱりこの様子じゃ白状する気はないな。
これ以上詮索して言及しても仕方ないしと諦め、私もソファに腰を下ろした。



