最後の恋って、なに?~Happy wedding?~


 確かに自分の部屋だから自由でいてもらっていいんだけど……仮にも《《女》》がいるのよ? この人に緊張感というものは微塵もないのかな。
 さては手慣れているな……この男。

「何か飲むか?」
「いえ、お気になさらず……」
「さすがにそうもいかないから。珈琲でいいか?」

 遠慮をしている訳ではないけれど……とも言えず、半強引に推し進められてしまっては大人しく言う事を聞くしかない。
 桐葉さんがキッチンへと消えていくのを見送りながら、リビング側の巨大なソファに腰掛けて待つことに。

 こんな時間に男の人の家に来るなんて、正直初めて……
 私も凪も実家暮らしだから、付き合っていた時は泊まる事もなかった。それもこんな高級そうな部屋は旅行のホテルくらいしか―――

「ん?」

 キョロキョロと部屋中を見回して呆気に取られていると、テレビ台の横に飾られている1つの写真立てが目に留まった。

「あれって……」

 ソファの位置からでは誰が映っているのかハッキリ見えなくて、ちょっと気になって近くで確認しようと立ち上がった。
 手に取って目にした写真は、向かって左側にたぶんこれは桐葉さん。その隣に映っているのは……女性?

「元カノ……?」

 以前、桐葉さんが話してくれた”恋愛にのめり込んだストーカー”を思い出す。けれどその人は桐葉さんのトラウマの元凶のはず。こうして大事に残しておくとは思えないし。