最後の恋って、なに?~Happy wedding?~


 どうして彼は怒っているの? 私なにかまずい事を言った?

 何に対して怒っているのかわからないけど、言い方が悪かったのかと思い恐る恐る聞き方を変えてみた。

「本当にあとは残り少ないですし、私1人でも大丈夫かと……」

 すると今度は反応が一変。『ったく……』と嘆息をつき、呆れながら返事をした。

「こんな時間に女のお前を1人にして、俺だけ帰れるわけがないだろ」

 今度は私が驚いて、ポカんと口が開いたまま呆然としてしまった・・・

 この人の性格からして、この発言は破壊力あるパワーワードだ。

「部下に何かあればこっちが咎められるからな。無責任な事は出来ない」
「あー……なるほど、です」

 ビックリした。そういう意味かとちょっとホッとしてしまう。この人に限って”女のため”なんて、ありえない話だから。

「そうだ。お前に渡すものがあったんだ」

 『桐葉さんに限って優しいはずがない』と余計な事を考えながら作業の手を進めていると、彼は鞄から白い封筒を取り出して席を立ち、私にその《《何か》》を手渡した。
 何かな? と首を傾げながら中身を開けてみると、そこに入っていたのは私が彼に頼んでいたもの。

「あ、名刺……ですか」

 100枚の束が、まるで新札束のように綺麗に整って帯で巻かれて入っていた。