受話器を耳に当てたまま思考が停止。そんな私に新郎は、どうしてそうなったのか説明を始めた。
彼の話によると、間違えてしまった相手は結構な偉い人。つい最近肩書が変わったらしく、以前までの役職が定着しすぎて勘違いをしたよう。こちらに伝えた際にも再度確認をしなかったため、気付いたのが今日になってしまったとの事。
『座席の表を見直して気が付いたんです! どうしたらいいでしょうか!?』
焦る新郎の声を聞きながら、私も困って言葉を失ってしまう。
打ち合わせの際、会社の方々の名刺を1人1人確認する作業は元々行っていない。あくまで新郎新婦からのリストで作成しているのが現状で、氏名や漢字などのミスも把握しきれない。
よりによって会社関係だから訂正しないとマズイし、だけど式は明日。
職員はみんな帰ってしまい、1人じゃ時間ばかり掛かってダブルチェックも出来ない。
どうするか考えないとっ
『確認して連絡する』とだけ伝えて電話を切ると、私はゲストに配布する用の席次表が大量に入った段ボール箱を開け、パソコンで元のデータを開いた。
およそ100枚。肩書が変われば席順も変わる。すでに設置が終わった会場の席も移動しないといけない大仕事に、ガクッと肩を落とした。
「全部終われるかな……」
途方に暮れる作業に唖然としていると、事務所のドアがガチャと開いた。
「まだ残っていたのか?」
桐葉さん―――?



