ー独刻ー
「雨哥」苺美の声。
何度も何度もその声が名前を呼ぶ。
「雨哥」
「うた」
「ウタ」
「雨哥」
その度に頭を振り「うるさい」と現実を見つめる。そうして戻す。
最初のうちはタキも同じだったと言っていた。
雨哥にも起こると思い、タキは教えていた。
だから大丈夫。もう少しで慣れるはず。
大丈夫。タキの言葉を信じる。大丈夫。

【あれから大丈夫だった?】と琉羽からメッセージが届いた。
日付も変わっている。
胸が痛む。琉羽には言えない。
黙ってる事がこんなにも痛むなんて…。
大きな出来事は全部話して来た。
でも今回だけは…言えない。
琉羽は知ったら…どうするだろう…。
どうなるだろう…。嫌。
琉羽に嫌われるのだけは絶対に嫌。
だから言えない。痛むけど、言えない。
【もう…付き合いやめたんだ。離れてもらったから】
琉羽にそう返信を送る。
本当だ。嘘はついていない。
離れてもらった…離れて…。
【そっか。大丈夫なの?変な行動とか起こさないかな?】
起こせないよ。
【大丈夫。ありがとう。もう大丈夫だから、ごめんね。これから先も変わらずにいてくれる?】
【もちろんだよ。また行くね】
普通のメッセージのはずなのに…文字が潤んだ。
今だけは…。