ー初始ー
(時間を戻って思い返せば…。)

「まず、これを台の上に乗せて」
タキが足元の苺美を軽く、つま先で示す。
もうモノ扱い。
苺美の全体重が重力へと引かれ、重い。
台の上に乗せようと力を加える。
最期も重いのかよ…笑うわ。
まだ震える手で、それを地面から腰の高さまである台に乗せようと力を入れる。
半分を持ち上げても、もう半分を乗せる事が出来ない。
『いつも1人で乗せてるの?違う。そっか。男の人が手伝ってるのか…。
この食材を運び入れているあの男の人が手伝ってるのか…』と雨哥は思う。

「あの、足、手伝って下さい。乗せて下さい。ごめんなさい」と震えた声で言った。
雨哥の声にタキが軽々とその下半分を台の上に乗せた。やはり慣れている。
「見てな」と言われ、タキの動きを見る。
そしてまた「覚えて」と言う。
何度もその都度言われた。
「覚えて」