ワークショップの成功と怜士の夢の実現の確信を得たところで、そろそろ帰ろうかと時計を見る。

もうすぐ正午になりそうな時刻。どこかでランチを取ってから帰宅しよう。

昨日まではまったく食欲がなかったのに、ワークショップを見て高揚したのか、とても気分がいい。

この調子なら、冷静に怜士と会話が出来る気がした。

昨日取り乱してしまったことを謝って、私がなにを思っていたかを全部話そう。

不安に思ったこと、嫉妬してしまったこと、飲み込んだはずの過去のもやもやまで全部。

彼ならすべて受け止めてくれる。今なら、そう信じられる。

怜士に先に帰っていると伝えようと姿を探すけれど、受講者への対応などに追われているのか、保護者やスタッフに囲まれていて話せそうにない。

連絡だけ入れておけばいいかとスマホを取り出しながらイベントスペースを後にしようとすると、悔しそうに唇を噛みしめる池田さんと目が合った。

せっかく気分が浮上したのに、彼女と話して再び落ち込むのは避けたい。

そのまま帰ってしまおうと踵を返すよりも先に、向こうから声を掛けられてしまった。

「あなたは部外者でしょう? 勝手なことはやめてください」