「親友と好きな人が同じみたいで…」






一颯くんに言ってもどうしようもないことなのに私はそうポロッと口にしてしまった。






「で?」



「えっと、でも友達は私の好きな人を諦めようとしてて私に伝える気もないみたいで別の人と付き合うことになったの」



「ならいいじゃん、友達は諦めようとしてるなら知らなかったことにしたらいいじゃん」






知らなかったことにする。


確かにそれも考えた。



でもそれって卑怯じゃない?



私が先に好きになったからそれを知ってるから諦めるだなんて。






「友達の気持ちを汲むなら知らないフリするのが1番なんじゃねーの?」



「そうかな?」



「そーだろ」






なんの迷いもなく言い切る一颯くんは少し先輩に似てるなぁなんて思った。


それと同時に私の悩みがちっぽけなものに思えてくる。






「どうしても悪いと思うんだったら好きな人を諦めるかだろ」



「それは…出来ない」



「だったら知らないフリしかねーだろ。
クヨクヨする意味がわかんねー」






くだらないとでも言うような言葉に私は不覚にも元気付けられてしまった。






「ペラペラと話してごめんね!
元気でたよ!ありがとう!」






悪態もつかずに聞いてくれてアドバイスしてくれた一颯くんにお礼を言うと、一颯くんは何やら少し考え込む仕草をしたあと私を見る。