ワインレッドにさよならを

 今すぐ理香の中の誠一への恋心全部を捨てることはできないし、捨てる必要もないのだと思う。

 失恋も全部ひっくるめて、理香は次の恋をするのだろう。

 それに悠太はきっとこのリップも似合うと朗らかに笑ってくれる気がする。


 もう、あの人のためにこのワインレッドのリップをつけることはないけれど。
 こうして自分のためにつけていきたい。

 鏡の中の自分は、相変わらずだけれど、前よりも少し明るい顔をするようになった気がしている。


 背伸びをするワインレッドにさよならを。
 新しい私に、ほんの少しの彩りを。



 玄関のチャイムが鳴り、理香はそっとワインレッドのリップをまたポーチに仕舞った。