ワインレッドにさよならを

 涼し気な顔で運転する誠一の横顔は相変わらず格好いい。

 前はこの横顔を見つめるのが幸せだったけれど、今は苦しくて仕方ない。

 こんなに苦しいのも自分だけかと思うと余計に。

 キュッと唇を引き結び、理香はその顔を見ないようにつとめた。
 外の景色を見るように、窓の外へ視線を移す。

 誠一を好きでいるのはやめようと思った。
 やめられると思った。
 なのに会うだけで、こんなにもその意志はぐらついて弱いものなのだと思い知る。

 はやく、はやく、はやく。

 自分の家についてほしい。
 二人だけの空間に長くいればいるほど、誠一から離れるという理香の決心が鈍りそうで恐ろしい。



「ありがとうございました」

 見慣れた自分のマンションが見えてきて、理香はほっと息を吐き出した。
すぐにでも逃げ出してしまいたかった。

「理香」

 けれど、ドアにかけた理香の手を誠一の手が止める。身を乗り出してこちらの行く手を塞ぐように。