ワインレッドにさよならを

 一日一日過ぎるごとに、誠一とのことが思い出になっていく。

 古びていくわけではない、それは綺麗なだけの思い出ではなかったはずなのに、理香の中で大事な宝石のように変わって、そして心の奥の宝石箱に仕舞われる。

 そして遠くからそれを眺めるだけで安心するようになる。
 不思議な感覚だった。

 色褪せるわけではないけれど、綺麗なものとして昇華されて、少しずつ穏やかな気持になっていく。


「水族館とかどうですか?いかにもデートってところ、行きたいです」

 新しい思い出に塗り替えてくれるのは、目の前の悠太だ。

「うん、行こう」

 まだ自分の中の気持ちを整理できたわけではない。
 悠太のことを好きかと言われたら親友以上の感情があるかはまだわからない。
 けれども好きになりたいと思った。

 今度は悠太と穏やかな関係を築いていけたらいいなと思う。