ワインレッドにさよならを

 辛くても、恋を失くしても、新しい一日が来る。
 
 誠一への引きずる気持ちを抱えながらも、日常は過ぎていく。


 表面上だけでも普段通りを装うと、自然と心もそれにならおうとするのか、それともいい加減麻痺してきたのか、なんだか胸の傷みが薄れてきたような気がしている。

 それは気のせいかわからない。



「理香さん、次はどこいきましょっか?」

 それとも今目の前にいて自分の気を紛らわそうとしてくれる悠太のおかげだろうか。

 悠太の存在は今理香の中で大きくなっているとは思う。

 嬉々として次の約束をとりつけようとする悠太は散歩にいきたくて仕方ない子犬みたいで可愛い。
 いつも隣にいて、きっと自分が悠太に誠一を重ねていたことも気づいていたろうに、悠太は何も言わなかった。