ワインレッドにさよならを

 悠太があまりにも堂々と言うのでなんだか理香は呆気にとられてしまう。
 悪戯っ子のように光る悠太の瞳はどこか得意そうにも見えた。

「俺って悪い男なんですよ」 

 そんなことを堂々と言うものだからおかしくなって理香は少しだけ吹き出した。

「あ、笑わないでくださいよ!俺は真剣なんですからね!」

 子供みたいな顔で唇を尖らせながら悠太は拗ねる。
 こういうところは学生の頃からちっとも変わっておらず、それが理香を安心させる。
 ほっと肩の力が抜けて、理香は悠太の前だと安心できる。

「いいのかな……?悠太に甘えて」
「いいんですよ。お互い様です。俺だってこの状況を利用してますから」

 ギラリと、ほんの少し優しく細まる悠太の瞳の奥に強い輝きが見える。
 それは欲望という名の情熱のような、まっすぐに理香の心臓を射抜く光。

「……俺のこと、好きになったらいいのに」

 真摯な響きの言葉にドクリと理香の心臓が跳ねる。

「……悠太……?」
「とりあえず来週俺とデートしましょうよ!」

 ぱっとすぐに悠太はいつもの子犬みたいな笑顔に戻っていた。

「う、うん」

 理香の顔が熱くなる。血液が沸騰するかと思った。こんな顔をする子だっただろうか。

 しばらくどぎまぎしてまともに悠太の顔が見られなかった。