ワインレッドにさよならを

「……私、悠太のこと、好きになるかわからないよ?」

 下手くそな言葉だということは、口に出してしまった後に気がついた。

 ピタッと悠太の動きが止まって少しだけ笑顔が強ばる。

 やってしまった、と思った。
 傷つけるようなこんな言い方がしたかったわけではない。

「うん、知ってます」

 眉をハの字にして困ったように笑う悠太。
 怒らない彼にやっぱり自分から離れなくてはならないと、理香は思った。

「ごめん、突き放すような言い方がしたかったわけじゃなくて……」
「うん」
「えっと、……上手く、言えないかもしれないんだけど……、」
「うん」

 悠太は優しく理香の言葉を待ってくれた。

 頭の中で色々な言葉がぐるぐるとまわり、つっかえつっかえ、でも自分の正直な気持ちを伝えたかった。

「悠太はいいやつで、優しくて、……なのに見返りも求めないで私のわがままきいてくれて、……。でも私は今も誠一さんのことが好きで、……宙ぶらりんなのはよくないってわかってるのに……悠太のこと利用するみたいでずるくて、……こんな自分、嫌だ。……だから、……その、……」

 悠太のことは親友だと思っている。
 かけがえなく大事な存在だ。
 
 それが恋だとか愛だとかそういう気持ちになるかは今はわからない。

 今は誠一のことで頭がいっぱいで、他を考える余裕がなくて理香自身にもわからないから。
 
 思ってることをちょっとずつ吐き出した。
 きちんと悠太がそばで支えてくれて嬉しかったことも、感謝をしているということも。