ワインレッドにさよならを

 悠太と理香の関係はなんとも言えず奇妙なものだった。

 理香は誠一が忘れられないし、誠一のことが好きだけれど、悠太はそれでいいと言う。

 理香を甘やかしてわがままを聞いて時には抱きしめて慰めて、けれど、悠太は理香の恋人ではない。

 手を繋いで、抱きしめてくれるけれどそれ以上触れたりはしない。
 
 友達以上、恋人未満。

 ただたんに理香が悠太の気持ちを踏み躙り彼の優しさを利用しているだけの関係に思えて、理香はそれが時折とても苦しくなる。

 悠太は子犬みたいに愛嬌があって優しくて甘え上手で甘えさせ上手。
 下に妹や弟がいるせいなのか、面倒見がよくて気遣いができ、年上の理香よりもしっかりしていると思うところが多々ある。

 特段目立って格好いいとかではないけれど、不思議と人を惹き付けるタイプだったし、大学生の頃はとてもモテていた。
 だからこそ余計に苦しい。

 悠太みたいにいいやつが、なんでこんな自分なんかをかまってくれるのかと。

 もっとふさわしい素敵な女性がいくらでもいるだろうに、と。