にわかに道の向こうから大声が聞こえたかと思うと、人の合間を縫ってひとりの少年が走ってきた。追われているのか後ろを見ながら走っていたため、サマラに思いっきりぶつかってしまう。
「いったぁ~……」
よろけて尻もちをついたサマラに、レヴとマリンが慌てて駆け寄る。
「大丈夫、サマラ!」
「立てるか?」
「平気。ちょっとお尻打っただけ」
サマラが立ち上がってスカートの埃をパンパンと払ったのを見て、レヴはぶつかってきた少年の方を振り返ると「おい! あぶねーだろ!」と怒鳴った。
サマラの方は無傷だったが、少年はどうやら足を捻ってしまったようだ。足首を押さえたままオロオロとしている。
少年は体格的にサマラたちより少しだけ年上に見えた。しかし外套のフードをすっぽりかぶっているせいで、顔と髪はよく見えない。
彼は焦った様子で「す、すまない……」とサマラに告げると、後ろを気にしながらよろよろと立ち上がろうとした。彼が気にしている方角からは、王宮の警備兵らしき人が数人走ってくる。
「あいつらから逃げてるのか?」
なんとなく察したレヴがそう聞くと、少年はフードをギュッと握りしめながら無言で頷いた。
「あれって王宮の兵士でしょ? あなた何か悪いことしたの?」
同じようにサマラが尋ねると、少年は今度は首を横にブンブンと振って答えた。
「してない! 悪いことなんか……してない。僕はただ……ちょっとだけ遊びたかったんだ」
その言葉を聞いて、サマラはレヴと顔を見合わせる。そして少年を両脇から抱え立ち上がらせると、細い路地へと走り出した。
「えっ!?」
少年が驚いて目をしばたたかせているうちに、三人の体がふわりと浮き上がった。三人の体を抱えて飛翔したのは、風の精エウロス(人型をした東の風の精)だ。しかし少年には見えていないようで、「え!? 浮いてる!? わ! わぁあっ!」とジタバタ大騒ぎしている。
「うるせーな、おとなしくしろ」
レヴがパチンと指を鳴らすと視認の魔法がかかり、羽衣を纏った男の姿が現れる。それはそれで驚愕だったようで、少年は「~~っっ!?」と言葉を失くして目を見開いていた。
すると、さっきまでいた路地裏に兵士たちが駆けこんでくるのが見えた。まさか探している人物が上空にいるとは思っていないのだろう、辺りをキョロキョロと見回すと手分けをして皆どこかへ行ってしまった。
辺りから兵士たちが完全にいなくなったのを見届けてから、レヴはサマラと少年と共に路地裏の地面に降り立った。エウロスの姿は霧のように消えてしまい、少年はまた驚きに目をまん丸くする。
「いったぁ~……」
よろけて尻もちをついたサマラに、レヴとマリンが慌てて駆け寄る。
「大丈夫、サマラ!」
「立てるか?」
「平気。ちょっとお尻打っただけ」
サマラが立ち上がってスカートの埃をパンパンと払ったのを見て、レヴはぶつかってきた少年の方を振り返ると「おい! あぶねーだろ!」と怒鳴った。
サマラの方は無傷だったが、少年はどうやら足を捻ってしまったようだ。足首を押さえたままオロオロとしている。
少年は体格的にサマラたちより少しだけ年上に見えた。しかし外套のフードをすっぽりかぶっているせいで、顔と髪はよく見えない。
彼は焦った様子で「す、すまない……」とサマラに告げると、後ろを気にしながらよろよろと立ち上がろうとした。彼が気にしている方角からは、王宮の警備兵らしき人が数人走ってくる。
「あいつらから逃げてるのか?」
なんとなく察したレヴがそう聞くと、少年はフードをギュッと握りしめながら無言で頷いた。
「あれって王宮の兵士でしょ? あなた何か悪いことしたの?」
同じようにサマラが尋ねると、少年は今度は首を横にブンブンと振って答えた。
「してない! 悪いことなんか……してない。僕はただ……ちょっとだけ遊びたかったんだ」
その言葉を聞いて、サマラはレヴと顔を見合わせる。そして少年を両脇から抱え立ち上がらせると、細い路地へと走り出した。
「えっ!?」
少年が驚いて目をしばたたかせているうちに、三人の体がふわりと浮き上がった。三人の体を抱えて飛翔したのは、風の精エウロス(人型をした東の風の精)だ。しかし少年には見えていないようで、「え!? 浮いてる!? わ! わぁあっ!」とジタバタ大騒ぎしている。
「うるせーな、おとなしくしろ」
レヴがパチンと指を鳴らすと視認の魔法がかかり、羽衣を纏った男の姿が現れる。それはそれで驚愕だったようで、少年は「~~っっ!?」と言葉を失くして目を見開いていた。
すると、さっきまでいた路地裏に兵士たちが駆けこんでくるのが見えた。まさか探している人物が上空にいるとは思っていないのだろう、辺りをキョロキョロと見回すと手分けをして皆どこかへ行ってしまった。
辺りから兵士たちが完全にいなくなったのを見届けてから、レヴはサマラと少年と共に路地裏の地面に降り立った。エウロスの姿は霧のように消えてしまい、少年はまた驚きに目をまん丸くする。


