「明莉、俺は不思議で不思議でたまらない」
グッとシワを寄せた先輩の眉間が、ピクピクと動く。
あぁ、ヤバい……。
これは、先輩がキレる5秒前の合図だ。
「明莉、お前は自分が文化祭実行委員だという自覚があるのに……なんで――」
先輩がキレるまで――5、4、3、2、1……。
「――『文化祭』の“祭”の字が間違ってるって、気づかねぇんだよっ!!」
実行委員室に、先輩の怒鳴り声が響き渡る。
「す、す、す、すみませんっ!!」
雷を落とした先輩に頭を下げるあたし。
黒岩先輩が激怒している理由。
それは、文化祭の日に配るリーフレットの誤字をしてしまったことと、それに気づかないまま大量にコピーしてしまったことが原因だ。