十二月六日の月曜日。彩羽が死んだ大体の時刻を聞き出し、僕はいちど訪れた高架下で待ち伏せをすることにした。

 五時間目が終わったあと、体調がすぐれないという理由で学校を早退した。あながち仮病でもないので、先生はすんなりと帰してくれた。自宅とは別の方向へあるき、駅に向かった。

 幽霊と生者を区別するため、生きている方を片仮名表記で思うことにした。

 スマホの液晶から時刻を読み取る。頭上ではときおりガタン、ゴトン、と線路の軋む音が鳴りひびいていた。

午後四時十五分。遠くに見える山の稜線がオレンジ色に光っている。背後から照らされ、逆光となった街並みが暗い闇に沈み、深海を思わせた。

 そろそろ日が暮れる。学校帰りの、まだ生きているイロハがここを通り過ぎる時間が近づいている。

 スマホに並べた彩羽の言葉通りなら、あと二十分もしないうちに現れるはずだ。

「あのさ」

 僕は手帳型のスマホを開けた。高架下の影になった場所なので、液晶の光が四角く切り取られて目にまぶしい。

「ずっと聞きたいと思ってたんだけど。あのとき……“こっくりさん”をやったとき、タカシとコウジの質問にすらすらと答えてたじゃん? 幽霊になるとそういう、神がかり的な力ももらえるようになるの?」