電気系統に干渉しやすい彩羽がエレベーターのモーターか何かを動かし、助けてくれたのだ。

 あとから知ったことだけど、エレベーターが止まってしまったら操作盤にある非常ボタンを押して外部に助けを求めなければいけない。

 人の手で復旧作業が行われるため、長時間とじ込められる可能性もある。

「ありがとう」

 彩羽のおかげでそうならなかったことに、僕は素直に感謝を述べた。


 *

「彩羽さんってどんな人だったの?」

 僕は彼女の名前をさん付けで呼ぶようになった。

 僕より四歳年上なのでそうした気づかいをしたわけだが、会話では特別、敬語を使わなかったし、彼女は僕の名前を『エイト』と呼び捨てにしていた。

 彩羽を成仏させるため、僕は本人から三島彩羽の情報を聞き出すことにした。

彼女がどこに住んでいて何が好きで何を夢見ていたかを詳細に聞き出し、ノートにメモをとった。家族構成や恋人の有無に関しても尋ねる。

 幽霊が成仏できないのは、この世への未練があるせいだ。インターネットからそう教わった。

どうしても叶えたかった夢や、成就しなかった恋心があるのだろう、僕はそう睨んでいた。