こんなもの、興味のない人にとってはただ
のゴミでしかないけれど。と、内心肩を竦め
ると、満は「ははっ、さんきゅ」と笑ってそ
れをテーブルに並べてくれた。

 そして、コンビニで買ってきた漬物やミネ
ラルウォーターをテーブルに並べると、満留
の向かい側に腰掛けた。

 「さ、食べようか」

 「うん。いただきます」

 満留はほんわかと、湯気が立ち上るカレー
を眺めると、両手を合わせてからスプーンを
手に取った。小鉢に入れられた福神漬けを
カレーに載せ、濃厚な色合いのビーフカレー
と共に口に運ぶ。満は正面からじっとその様
子を見守っていて、もぐもぐと咀嚼するのが
ちょっと恥ずかしかった。

 けれど、口のなかでほろほろと崩れる牛肉
の甘さと、アクセントのように歯ごたえのあ
るひよこ豆。辛口ながらも辛すぎないのは
トマトの酸味があるからだろうか?

 正直言って、母が作ってくれるカレーに
負けないくらい、美味しかった。

 「んっ、すごく美味しい!プロが作った
カレーみたい!」

 ごくりとカレーを飲み込んだ瞬間に感じた
ままを口にすると、満はほっとしたように身
体を椅子の背に預けた。

 「良かったぁ。一晩、カレーに張り付いて
煮込んだ甲斐があった」

 白い歯を見せながら何げなくそんなことを
言うので、満留はぎょっとする。

 いま、「一晩」という単語が聞こえなかった
か?まさか、このカレーを作るために徹夜し
たのだろうか?不安に思って満の顔を覗くと、
「あ、いやっ」と、満は慌てて訂正した。

 「一晩は大袈裟だな。でも、牛肉が柔らか
くなるまでは、と思ったから夜中の二時くら
いまでは鍋に張り付いてた」

 「そんなに遅くまで?本当にありがと。満
くんの愛情がいっぱいこもってて、泣けるく
らい美味しい」

 「うわ、満留さん。オーバーだな」

 「全然オーバーじゃないよ。それに……」

 そこで言葉を途ぎってしまった満留に、満
は首を傾げる。傾げながら満もカレーを食べ
始めた。

 「こんなこと訊いたら失礼かもだけど……
五等級のお肉なんて、高かったでしょう??」

 ああ、訊いてはいけないと思っていたのに。


――訊いてしまった。


 けれど、ごろごろとカレーに浮かぶ牛肉を
見れば、やはり、気になってしょうがない。

 図々しくも、空手でお邪魔して夕食をご馳
走になっているのだから、余計に気になった。

 そんな満留の心中を知ってか、知らでか、
満は大したことないといった顔で恐ろしいこ
とを口にしてくれる。

 「ああ、どうせ作るならめちゃくちゃ旨い
ビーフカレー作ろうと思って百グラム二千円
のヤツ選んでみたけど。普通はいくらくらい
の買うんだろうな?相場がよくわかんないけ
ど、うん。確かに旨く出来てる」

 最後の方は独り言のようにそう言って頷い
た満に、満留は言葉を失う。