あれは私が中学生になった時の事である。
そして、私の悩みの始まりの時期だった。

今思えばこの時点で親に相談してれば運命は違ったのかなぁなんて後悔だけが残ってる。

そう、中学入ったばっかの時、
朝会かなんかで体育館に全新入生が集まった。

中学と高校は女子校だった為、周りは女子しかいなかった。

近くにいた子は、女の子らしく、芸能人ほどではないけど、清潔感もあり、丸っこくて凄く可愛い子だった。

当時の会話の内容は忘れちゃったけど、
話しかけて来てくれたのが、人見知りの自分にとっては嬉しくて、同性にも関わらず、ドキドキした。

それからその子は、よく話しかけてくるようになった。性格はすごく優しくて、顔も可愛くて、すぐに好きになった。
女子校で席替えなんてワクワクしないと思われるだろうが、私はその子と同じ席になりますようにと内心祈っていた。

祈りが届いたのか、隣の席になった事もある。
まるで、異性に恋するかのように胸の鼓動が止まらなかった。けど、楽しかった。
そして反面辛かった。

何故なら、当時はLGBTが寛容になる少し前の時代、おネエやゲイなどがテレビで、活躍する初期の頃だった。

家族団らん中、テレビに派手なメイクと女装をしたゲイが映る。

「気持ち悪っ」

無意識に出た言葉なのか、意図的に出したのかは分からないが、それが母の本心だった。

母がLGBTに偏見があるということをなんで知ったかは覚えてないが、
母はいい事でも悪いことでもなんでも思った事をすぐに言うタイプで、わかりやすい反面、
偏見あるなら、相談できないなぁ…と子供心に思っていた。

でも、あの子に対する好きの気持ちは止まらなくて、学習机の引き出しの裏に、その子の名前を書いたりしてた。

何とか近づこうとして、その子が興味持ってたジャニーズを好きになった。
ただ、その子が好きなグループは好きになれず、違うグループを好きになった。

それでも、少しは仲良くなれたと思う。
その子が違う友達と話してると独占欲にまみれてヤキモチを妬いてた。

同性にヤキモチ妬くのはおかしいと当時思ってたし、小学校の時、周りから嫌われていたから、中学で同性好きがバレて噂になって嫌われるのだけは避けたい!そう思ってた。

だから、ヤキモチ妬いててもなんも言えなかった。

それでもその子が私の方を向いてくれてる時は嬉しかった。


しかし、そんな楽しい時間は長く続かなかった。入学して、みんなが慣れ始めた頃の時期だった。

その子こと、来島えりちゃんの友達が
聞いてきた。

「えりのこと好きなの??」と。

この時に好きと答えれば良かったけど、

当時は中学生、そして小学生の時に好きな人の事を言って、みんなに噂された覚えがあった。
今回は同性。そして噂されて、自分が同性好きというのがバレるのが嫌だった。また嫌われるのでは無いかと怖かった。

だから、
「好きでも、嫌いでもない」と答えた。

その子の友達は何回も聞いてきた。
「好きか嫌いかの2択!」と。
でも、私の答えは変わらなかった。

「じゃあ、嫌いってことじゃん!えり可哀想ー」と

そして、えりの元に行き、
「私はえり大好きだからね」と。

嫌いじゃないというのを否定する暇さえ与えてくれなかった。

その時の若干悲しそうなえりちゃんの顔が忘れられなかった。

もし、今度聞かれたら、性別関係なく好きな人は好きって言おうと決めた瞬間だった。
しかし、それ以降聞かれることはなかった。
それからもえりちゃんは優しかったが、仲が深まる事はなかった。

そして、私はえりちゃんの友達が苦手だった。
何故なら、「クラスメイトに嫌いな人いる?」
と聞かれて、「いない」と答えていた私だったが、あんまりにしつこいので、「自分」と答えた。でも、それでその友達が納得する訳なく、

「言わなきゃ、もう話しかけないし、友達辞めるよ。自分もなしで」と言ってきた。

今ならその友達の名前を名指しして、
「そういうこと聞いてくる人が嫌い」って言えるけど、
当時は中学生。そして、友達も少なく、孤独な生活を送るのが嫌だった、そして、その友達以外にも苦手な人もいた。

だから、答えてしまった、その子の友達の誰にも言わないからと言う嘘を信じて…

しかも最低な理由で…

「氷河さん…髪が長いから怖くて…」と。

答えてしまってからは案の定その友達は、氷河さんに告げ口しに言った。

私はその時から氷河さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

そして次の日、氷河さんは髪の毛をばっさり切ってきた。

謝ることも出来ず、大人になった今でも彼女には申し訳ないことしたなと後悔の念で溢れている。もちろん、氷河さんと友達になることはなく、あんなにつなぎ止めたかったえりちゃんの友達とも、えりちゃんのとも長く続くことはなく、今では完全疎遠に。
しかし、えりちゃんとそのえりちゃんの友達は友達のままであることに私は少しの不満を抱いていた。

学生時代の友達なんて疎遠になるだけなんだから、好きな物ははっきり言うべきで、何を言われても人を巻き込んで傷つけてはいけないということを中学生にして学んだ。

しかし、学んだだけで私は周りに流されると悪口を言っちゃうみたいで性格のいいひとには到底なれなかった。