ライトがどんな気持ちで占いを聞こうとしているのかは、わからなかった。

  占い師の女の人は50代位で、
普通の格好をしていて。
普通のテーブルがあり、窓の大きな部屋だった。

 占い師の顔が曇ったのがわかった。

「なんて、言ったらいいかしら」
占い師はそう言った
私は
「ズバッと言って下さい」
と、言った、歯切れが悪いのが、なんだか嫌だった。

「あのね。あなた達、昔恋人同士だったわ。だけど彼女殺されてる。彼は
後を追って亡くなった」

「前世って事ですか?」

「そう、ねえ、2人お互いどこかで
会った様な気になった事ない?」

私達は黙った。

「生まれ変わったら今度こそ一緒になるって強く思ってたみたい、
それで、やっと、会えた…だけど
彼女、30歳から先が見えないわ
ちょっとごめんなさいね。
なんか、
それと彼女は赤い薔薇が好きでしょ?」

「はい。」
私は赤い薔薇が大好きだった。
理由はわからないけど、

占い師は。
「入口の花瓶にちょうど赤い薔薇があるの、一本持っていきなさい。トゲがあるから気をつけて、
それと、お代はいらないわ、
何も解決策を出してあげられないから」

占い師はそう話して。

私達は静かに部屋を出た、
私は花瓶に入っていた、薔薇を一本取った。トゲだらけだった。
指先にトゲが刺さり。
血が出た。

河原公園のベンチに戻った

「リカ、薔薇好きなの」
「うん、憧れなの、いつか彼氏に
薔薇の花束もらうの。
それと、
30歳から先が見えないって。
なんか、私、実は勝手に、昔から
30歳位までしか生きない気がしてて
だから、なんか、納得。
でも、夢があるの。
私が死んだら、真っ白なウエディングドレス着せて、菊の花じゃなくて
薔薇の花で埋めてほしいの」

「夢って、死んだ時の夢かよ」

俺は今度生まれ変わったら、必ず一緒になるってゆうのが、しっくり来てた。

リカに初めて会った時
頭に
【君の為なら死んでも構わない】って
よぎった
俺はリカの為に一度死んでるんだ、
懐かしい感じも、切なさも。
前世で死に別れたなら。納得できた。
だけど、リカはその話しに触れない

なんだろう?

 私は、運命みたいなのが本当にあるのか?と思った。
私は前世でなんで殺されたの?
ライトは運命の人なの?

私は薔薇の花弁をちぎって川に流した。
ライトは黙って見てた。

「ねえ、ライト、ライトってお兄さんいるでしょ?」

「あー、アキラね、有名だからね。
さすがにリカも知ってるよね?」

「え?有名って」

「は?リカ知らないの?
アキラはモデルだよ、今月だって
表紙を飾ってる。コンビニ行けば
アキラがならんでるよ?」

「ウソ?アキラ、モデルなの?」

「え?アキラって…」

「私、アキラと付き合ってる」

「は?モデルなのもしらないで?」

「知らなかった。」

「マジかよ。」

「ライトに初めて会った時から
アキラの弟だって知ってたんだけど。
言えなかった、なんか、ごめん」

「なんで?言えなかった?」

「わかんない。自信無かったの
アキラの彼女でいる事に、
今、モデルだって知って、なおさら
自信無くなった。
釣り合わないじゃん。」

「じゃあ、俺でいいじゃん」

「… 」

「冗談だよっ」
俺は叫びたかった。
俺はただリカが好きだ、兄貴の彼女でも、前世の彼女でも関係ない。
俺は、リカが好きだ、
アキラは、リカの事本気なのかな?

「リカ、なんで、アキラ?」

「あ、情けない私を助けてくれて
こんな私を天使だと言ってくれる
アキラの腕の中にいると、安心するの」

「まさか、アキラがリカに告白した?」

「告白っていうのかな?
付き合ってって」

「アキラが?」

「やっぱり信用出来ないよね?
アキラと私じゃ、釣り合わないよね」

「いや、そうゆう事じゃなくて、
アキラなんで、リカなんだろ?」

「そうだよね?モデルって聞いて
なおさら私、なんでアキラが私と付き合いたいか、わからなくなった」

俺はリカに悪いけど、
悔しいから言わなかった。
アキラは、多分本気だ、
俺はわかる。俺がリカに本気なように

誰も好きになった事がない、
女の子にドキドキした事がない、

だけど。リカは特別だった。
他の子と違う、完璧じゃなくて。
儚くて、痛々しくて。
可愛いらしくて。守りたい。
だけど、

「そっか、アキラか、モデルって知らなかったって、アキラが知ったら
驚くよ!アキラは、自慢の兄貴だ
リカを大切にしてくれるよ。
もし、アキラがリカを泣かせたら
リカの親友の俺が許さない」

「親友?」

「うん、俺達はきっと親友の運命だよ
だって親友は離れ無い、裏切らない
ずっとそばにいるよ」

「ライト、」

リカの目が潤んだ、
俺が泣きそうだった、
どうして、こんな少ししか会った事の無いリカに
俺は、
リカが笑っててくれるなら
それでいい、俺はリカの側にいる

「俺はさ、彼女いるし」

「ライト彼女居たんだ」

「あ、なんか、俺も、話してなかったね。彼女いる事、あいこだね」

私達は無意識にお互い恋人がいる事をかくした。
なぜだろ。

「リカ、真っ暗だ帰ろ、送るよ」

ライトは家に送ってくれた。
たまたま、心配したおばあちゃんが
出てきた。
そしてライトを見るなり

「リカの彼氏だろ?」と
私は

「違うよ彼氏の弟だよ」と言うと

「いや、本当の彼氏はこの子だよ」
とおばあちゃんが言った。

俺はリカのおばあちゃんの言葉に
やっぱり運命の人なんだと思った


俺は家に帰ってアキラに
「アキラ、マジなの?」

「は?何がだよライト」

「本気で好きな女の子なの?」

「は?リカの事?」

「好きな女の子出来たなら言えよな
リカ、アキラがモデルってさっきまで
知らなかったぞ?」

「は、待て待て、さっきまで?
え?リカ俺がモデルって知らなかったの?なのに付き合ったの?」

「そう見たいよ、リカらしいだろ」

「ライト、リカと仲いいのか?」

「ああ、すごく気が合って」

「いや、さっきって、さっきまでリカといたのか?」

「そうだよ、泣きながら電話してきて
転んだとか、コーヒーこぼしたとか
情けないとか言ってた。
2針縫ったみたいだし。
アキラがモデルだって知って、
自分じゃ釣り合わないって、
凹んでたから連絡したほうがいいぞ」

アキラの顔色が変わった、

「オレといる時転んで、病院連れて行って縫ったんだ、泣きもしないで、
大丈夫だって、言ってたのに。
ライトには泣きながら電話したのか?」

「え?アキラ転んだ時一緒にいたの?
アキラの前でカッコ悪かったから
凹んでたのか?」

「リカはライトの前なら泣いて、
カッコ付けないでワガママ言えるのか?」

「友達だからだろ?
あ、リカね薔薇の花が好きなんだってよ!死ぬ時は、ウエディングドレス来て薔薇の花で埋めて欲しいって」


「なあ、ライト?ライト。
リカ、好きだろ?」

「なんでだよ、俺、彼女いるし」

「彼女の事好きじゃないだろ
リカが泣きながら電話して来たら
行くんだろ?
今まで、そんな事する女いなかっただろ?」

「リカは親友だからだよ」
「は?」

「リカは親友なんだ!!」

アキラは黙った。
アキラは俺のヒーローで憧れで、
アキラが初めて好きになった子
俺が初めて好きになった子
兄弟だからってなんでも分け合える
訳じゃ無い。

「ライト、俺さ、入学して、すぐから
リカの事知ってたんだ、掃除が近くで
俺は女の子達から逃げて隠れてた。
他の女の子達は掃除をサボって俺を探してた。
リカはいつも1人でバケツに水汲んで
1人でモップで拭いて、
顔を真っ赤にしながら
急いで、そして、終わると人のいない
階段に隠れる。
そしてホッとした顔をして。
窓から外を見てた
なんか、健気で、少し痛々しくて。
助けてあげたいなって。
気になっててさ。
毎日見てたんだ、声はかけられ無かった、、逃げられそうで、
名前も知らないリカの事、考えるようになって、気になって、もしかして
好きってこうゆう事かな?って
それで、リカ転んだんだ、バケツの水ぶちまけて、滑ってまた転んで立てなくなった。
手を差し伸べたけど。大丈夫だって言って顔も上げないんだ、
1人で、立つ事も出来ないのに、
それで、抱きかかえて医務室に連れてった。
リカお礼を言いたそうなのに。
下ばかり向いてて、
だけど一生懸命お礼を言おうとしていて。
なんか、俺、この子が笑うなら
なんでもするよって思って。
いきなり付き合ってって。
しかも。5秒の間に答え欲しいって
言った。怖かった、初めての感覚で、
だけど。リカ付き合うって
でも、リカはきっとまだ、
俺を好きじゃ無い」

アキラらしくない。
いつも凛としていて、自信があって
なのに、

「あのさ、アキラ、リカはさ、
アキラに釣り合わないって気にしてる
だから。アキラの前で、ちゃんとしてたいんだよ。アキラに似合う彼女に
なりたいんだよ」

アキラは浮かない顔のままだった

「リカはリカのままでいいのに、
俺、リカに無理させてるのかな?」

元気の無いアキラに、占いの話しは出来なかった。

「リカの事もっと知りたいんだけどな
リカ、心開いてくれるかな?」

「なんだよ、アキラらしくないな
女の事で、しょんぼりするなよ
アキラだろ?みんなが憧れる
アキラじゃん」

アキラは、少し笑った。