今更、後悔しても遅いことを知っている。 だって、もう沙織はこの世に居ないから。 「ねぇ、楓」 「え?」 急に俺のことを呼ぶ声が聞こえた。 周りを見渡しても誰もいない。 空耳か……。 俺はベンチから立ち上がり、賽銭箱の前に立った。 ポケットの中をあさってみると一枚の五円玉が入っていた。 その五円玉を賽銭箱の中に投げ入れお願いする。 『もう一度、沙織と夏祭りに行きたい』 叶わないことなんて、分かっているのにお願いしてしまった。