皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり

「若様、少々お待ちください」

主人は言うと場を離れ、数分して戻ってきた。

手には水筒と紙袋を持っている。

「飲み物とサンドイッチです。今日は1日歩かれるのでしょう? ひと休みされる時にどうぞ」

主人はルイスに差し出しながら「急いでも成せることは限られていますから、楽しく」と微笑んだ。

「ガラスの靴の持ち主は存外、近くにいらっしゃる方かと思います」

ルイスにそっと耳打ちした。

Γだといいが」

ルイスは一瞬ドキリとしたが、すぐに気持ちを切り替えて澄まし顔で言った。

Γ若。行きますよ」

ソフィアは言うときびきびと出口に向かい、主人に一礼し、扉を開けた。

「もたもたしていると、日が暮れてしまいますわ」