皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり

ソフィアは正体がバレてしまわないかと、気が気ではない。

お忍びなのだから、元近衛騎士隊長ソフィアだとバレてはならないと緊張し、胸のドキドキが止まらなかった。

「舞踏会の日、ソフィアさまは護衛に着いておられなかったらしいですね。皇太子殿下の護衛はいったいどなたがなさっていたのでしょうか?」

「ん? そのようなはずは……軍服を着ていなかっただけでは」

「なるほど~。ソフィアさまのドレス姿も拝見してみたいものです」

「そうだろ、そうだろう。あれほど凛々しい軍服姿だ。ドレス姿もさぞや華やかだろうな」

ルイスが主人を煽りつつ、ソフィアの様子をちらり窺った。

微かに頬を染めたソフィアの横顔は、気に入ったを通り越し、可愛いとさえ感じた。

「若、じゅうぶん休憩はとれましたわ。無駄話はこのくらいにして、そろそろ」

ソフィアはツンと澄まし顔で言うと、席を立った。