国の情勢も知らないような、どこぞの令嬢など妃にしてたまるか!

身を忍んで市中に出かければ、この国の民がどれほど、国政を憂いているか。

貴族どもは一般の民たちが身を粉にして働いて些細なことで喜び、どれほどの辛さに耐えているかも知らない。

ルイスはソフィアがガラスの靴を受け取って数日後、久しぶりに、市中に出た。

ソフィアを伴って。

巷の噂では「舞踏会の後からガラスの靴が人気だ」という。

-ーあの靴職人め「くれぐれも他言無用に」と告げたはずなのに、ガラスの靴を流行らせるとは。まあ、それが俺の結局は意図するところだったのだけれど。流行りものが世に出れば、それだけ市場が潤い市中が活気づく。悪くない

ルイスはほくそ笑んだ。

「若、何やら嬉しそうですね」

ソフィアはルイスの言いつけを守り、お忍びではルイスを「若」と呼ぶ。