教室に向かうまでは、さすがに声をかける人は居なかったが、灯織は注目の的だった。


極めつけは、教室にいる2人。


席に座る皇とその隣の机に軽く腰をかける柿谷。

今までの出来事を見てきたクラスメイトからすれば、目を見張る状況。


柿谷がこちらに近寄ってきて、片手を上げるだけで周りがびくつく。



「そんなに髪伸びてたのか」


灯織の髪に優しく触れる。


「ん」


軽く答える灯織。


柿谷は、少し黙って、


「おかえり」


そう一言呟いた。


すると、灯織は


「怒ってもいいんだぞ」


何を考えている表情なのかは分からない。

けど雰囲気が優しい。


「自分勝手だって」


柿谷は眉間に皺を寄せる。

その顔を見て、灯織は微かに笑った気がした。


「嘘、冗談。」


柿谷の頭をポンポンと撫でる。


「ハルに染まってたらどうしようかと思った。俺、あの女、大っ嫌いだから」


柿谷は灯織を見つめる。


「お前は、可愛いね。ただいま」


「俺は」


すかさずそう呟いたのは皇だった。


「あ?お前のどこが可愛いんだよ。」


はあ、とため息をついて自分の席に歩く。


「今日は来たんだな」


2人もこちらに来て、柿谷が言う。