夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

 亮介に自宅を知られている嶺奈は、早々に立花の自宅マンションへと引っ越し、同棲を開始した。

 さすがに職場を変えることは出来なくても、これなら待ち伏せされる確率も少しは下がるだろう。

 心配はないはずだった。

 けれど、現実は違った。

 二人で約束を決めて始めたはずの同棲生活は、釦をかけ違えたように、すれ違いの日々が続いた。

 仕事で忙しいのは分かっている。でも、こんな生活なら、独りで過ごしていた日々と何も変わらない。

 毎日定時で帰宅する嶺奈と、いつ帰ってくるかも分からない彼。嶺奈の不満や不安が蓄積していくのに、そう時間は掛からなかった。

「……ん」

 寝室で眠っていた嶺奈は微かな物音に気付き、意識を覚醒させる。

 暗がりで、姿はよく見えないけれど、この煙草の残り香は彼のものだ。

「良平、さん……?」

「ごめん。起こした?」