夏の終わりと貴方に告げる、さよなら


「うん。それは分かってる。けど、俺だって不安がないわけじゃない。もし、阿久津に寄りを戻そうって言われたら、嶺奈はどうする? 全くなびかないってことはないでしょ」

 立花の棘のある言葉に嶺奈は、内心少し苛立ち始めていた。

 疑われるようなことをしたのは私だ。けれど、こんなふうに言われるのは正直言って、納得いかない。

「ないわ。それだけは言い切れる」

 つい語気が強くなってしまったのは、良平さんの言葉の真意を計りかねているからだ。
 
「…………」

 嶺奈を見つめる立花の寂しそうな瞳が、微かに揺れる。

 どうして、そんな瞳で私を見るの? 私のことを信じていないのは、良平さんのほうじゃないの?

 そう思いかけて、続く思考を遮断した。

 ──不安。彼が口にしていた言葉を頭の中で反芻する。

 私が良平さんを不安にさせてるんだ。だから、試すようなことばかり言って、本当の気持ちを確かめてる。

 どうしたら、分かってもらえるんだろう。