夏の終わりと貴方に告げる、さよなら


「それともう一つ。俺に隠してることがあるよね?」

 隠してること? 急に言われても思いつかない。嶺奈は必死に考えを巡らせる。

「何のこと?」

「阿久津と会ったこと」

 嶺奈の問いに、立花は間入れずに答えた。その瞬間、冷や汗が首筋を伝う。嶺奈は再び沈黙した。

 どうして、そのことを知っているのだろう。彼に心配をかけないようにと思い、亮介から接触を受けていたことを私は伝えていなかった。

 それに対して、彼は怒っているようだった。

 当然かもしれない。私も良平さんが昔の交際相手と、私の知らないところで会っていたら、きっと不快に思ってしまう。

 隠していたわけじゃない。そう言ったところで、今は言い訳にしかならない。

「……ごめんなさい」

「謝ってほしいわけじゃない」

 けど。と、前置きをしてから立花は言葉を続ける。