「意味が分からない。勝手に捨てたくせに、よくもそんなことが言えるわね」
「捨てたくて、捨てたわけじゃない」
嶺奈を見据えて、彼は言う。
「浮気してたくせに。白々しいこと言わないで」
「だから! 俺は……」
「帰って! 二度と私に近付かないで。もう、忘れたいの」
亮介のことなんか──。
「美緒が妊娠したっていうのは嘘だったんだよ! 俺だって、嵌められた側なんだ」
美緒というのは亮介の結婚相手のことだろうか。それに、嵌められたってどういうこと?
彼女の妊娠は嘘だったの? 亮介の言葉に、ますます理解が追い付かなくなる。
「手も繋いでなかったし、キスすらしてないのに、どうやったら妊娠なんかするんだよ。ふざけてるんだよ、あいつは」
声を荒げて、ヒートアップしていく亮介に、嶺奈は宥めようとした。
「ちょっと、落ち着いて」



